「東のポルト屋」店主のブログ

ポルトガル語教室とポルトガル雑貨販売をしています。まるで関係ない話もします。

【ポルトガル語学習】ポルトガルのポルトガル語が学べる本

ブラジル・ポルトガル語の本ならある程度手に入るのに、あえて「ポルトガルポルトガル語を勉強したいんだ!」という荒くれ者…じゃなくてひねくれ者…でもなくて
猛者たちを私は精一杯応援したい。

ネイティブの私ですら一見してどれを扱っているのか分からないぐらい、日本におけるポルトガル語テキスト事情は本当にトリッキーです。なので、ここでは「ポルトガルポルトガル語」が学べる本を紹介します。といっても、数はまだ少ないです。

・文法

f:id:mikeyyy:20190921084558j:plain   f:id:mikeyyy:20190921084959j:plain

しっかり学ぶポルトガル語 カレイラ松崎順子

ポルトガルポルトガル語 内藤理佳

どちらも文法を丁寧に説明しています。ピンクの方がライトで初心者向け、青い本はがっつりといった感じです。ピンクの方は、誤植・対訳ミスが多いというレビューも見かけますが、多少は直しているのか、個人的にはそれほど気にならない。(ただ、自分がしっかり読み込んでいないからという可能性もある)

発音

f:id:mikeyyy:20190921090108j:plain

ポルトガル語発音ハンドブック 弥永 史郎

ブラジルとポルトガルの両方の発音をしっかり説明。音声学の用語が頻繁に出てくるので、慣れない方は序論をしっかり読み込むか、youtubewikipediaで事前に知識を深めた方が良いかもしれません。
この本で致命的なのが、せっかくここまで丁寧に解説して単語例もたくさんあるのに、発音が確認できる肝心の音声CDがないということ…

以下の『FORVO』というサイトではネイティブの発音が無料で聴けます。ブラジル、ポルトガル、と発音した人の出身地も明記されているのでおすすめです。音質はご愛敬!

発音ガイド FORVO https://ja.forvo.com/

 

参考までに、以下のURLで"Bom dia"(おはよう)のポルトガルとブラジルを聞くと、それぞれ「ボン・ディーア」「ボン・ジーア」 になっているのが分かると思います。
https://ja.forvo.com/word/bom-dia/#pt_pt

・会話

残念ながら、会話本は見つけられず。ポルトガルの街並みや国旗を表紙にした本を時々見かけるので期待してしまうのですが、蓋を開いてみるとブラジル・ポルトガル語。フレーズブックなら、ブラジルとポルトガルを併記して紹介している以下の本があります。が!少なくともポルトガルポルトガル語に関しては、ちょっと堅苦しいというか回りくどいというか…丁寧語に近い表現が多い気がします。発音CDが付いているのは良いし、使えるフレーズももちろんたくさんあります。

f:id:mikeyyy:20190921092937j:plain

ポルトガル語会話フレーズブック カレイラ松崎 順子、フレデリコ カレイラ

 

次回はポルトガルポルトガル語が学べるアプリを紹介します。

【エッセイ】あなたの人生、導きます「ルーマニア#203」

けして怪しい宗教の勧誘ではない(笑)。私の好きなゲームの話である。

「ルーマニア#203」はかなり特殊なゲームだった。

まず、プレイヤーはゲームの主人公ではない。主人公はネジタイヘイというどこにでもいる(しかもちょっと冴えない)大学生で、プレイヤーはその主人公を「観察」するのだ。つまり「のぞき」である。

大げさに言っているのではない。ネジタイヘイが一人暮らしをしているアパートの部屋に複数のカメラが仕掛けられているかのような視点で、主人公の行動をぼーっと見る。夜遅くまでラジオを聴いてるなぁ、あ、タバコ吸い始めたなぁ…。

 

f:id:mikeyyy:20190914115920j:plain

この冴えない顔である。

 

そんなゲームがあるか。出来の悪い映画のようなものじゃないかと結論を急ぐでない。

ただぼけーっと見ていると平凡なネジタイヘイの大学生活は終わり、気付けば「50年後も平凡な冴えない日常を送っているネジタイヘイおじさん」を見せられ、エンドロールさえ流れない。なんにもおもしろくない。では、どうするか。

プレイヤーは主人公を直接操作することはできないが、部屋に転がっているアイテムを何度もクリックすることで主人公の関心を引き、行動を促すことができる。それは雑誌やテレビだったり、電話だったりカーテンだったりする。その積み重ねがやがて彼を壮大な(?)冒険へと連れ出すのだ。

冴えないネジタイヘイに、時にはスリリングな、そして時には甘くて切ない「素敵な」人生へと導くのがプレイヤーの役割。物語は複数用意されていて、彼の関心をどこに持っていくかによって分岐、展開していく。プレイヤーがすることはシンプルだが、時間制限があったり、何をすべきかはっきり分かっていない時は夢中になってネジの関心をあそこへここへと持っていく。失敗すると「冴えない70歳のネジタイヘイ」へと早送りされる。これが意外と悔しくて、悪銭苦闘の末に成功すると嬉しくて、はまる(笑)

毎回忙しく主人公を動かすような仕組みではないので、本当にただネジタイヘイの日常をぼーっと見ていられる時もある。このまったり感がまた良い。ラジオから聞こえてくるパーソナリティのトークや、テレビから流れてくるCMやドラマは作りこまれていて思わず聞き入ってしまうし、主人公の不在中に勝手にテレビをつけて「あれ、消し忘れてったかなぁ…」と不信がらせるちょっとしたイタズラなんかもできちゃう。友人「タカハシ」とのまったりトークも妙にリアル感があっておもしろい。

もうひとつ、印象的だったなのがネジタイヘイが好きだという架空の音楽バンド「Serani Poji」が実際にCDアルバムを発売したことだ。ゲーム中にネジが聴いている曲たちがそのままCDに入っている。女性がウィスパーヴォイスで歌うポップな歌にはじめは興味を持たなかったが、よくよく歌詞を聞いてみると物語性があって結構おもしろく、今でも時々聞いている。一番のお気に入りは「もじもじ」というボサノヴァ調の歌で、久々に会った男女の少し照れ臭い空気感が女性の視点から語られている。

ちなみに、ゲームのタイトル「ルーマニア#203」の#203とはネジタイヘイが住むアパートの部屋番号である。

ゲームと現実世界が交差する不思議な感覚を味わわせてくれる名作(迷作?)だ。