食事をしている時、電車に乗る時、ふとした時に死んだ飼い猫のことが頭に浮かぶ。この世を去って2ヶ月が経とうとしている。
傷口に塩を塗るつもりはないが、そんな時はもう少しその子がどんなだったか思い出してみる。当たり前だが、ほぼ飼い主である私しか知らないので、なんとなく自分が思い出してあげないとかわいそうな気がするのだ。
鏡に映る自分に向かって、また冷蔵庫に向かって前足を付けてカリカリと引っ掻く変な癖のある子だった。いつまでもいつまでも夢中になってカリカリカリカリするのである。それを夜中にやられるとたまらないので、時々「うるさーい!!」と追いかけ回していた。
小さく丸めた紙を遠くに投げると追いかけ、手元まで戻しにくる犬のような一面もあった。
1歳過ぎの娘が昼寝していると、少し距離を置いて一緒に寝たりもした。娘が生まれて1年くらいの間は絶対に近づかなかったが(笑)
持病で調子が悪くなり、ご飯を食べなくなってからは夜眠る娘の布団にもぐり、ぴったりくっついて眠るようになった。真冬だったので子どもの体温が温かかったのかもしれない。
一切食事を口にしなくなって2週間経ったころ、ほぼ寝室で一日中寝ていたのが突然リビングにやってきてごはんをバクバクと食べ始めた。一度きりのことで、その二日後に虹の橋を渡った。
仕事を終えて、保育園まで娘を迎えに行って帰った平日だった。電気を付け、娘が観たがっているテレビを付け、手を洗って寝室に向かう。日課の「みかん生存チェック」である。布団をめくるといたが、既に息を引き取っていた。
よくドラマで死んだ人に向かって「あんた〜!」「パパ〜」などと叫んでいるのを観るが、そんなことするかね?と思っていたが。なんじゃい、気づけば自分も全く同じように亡骸に向かって猫の名前を何度も呼んでいたのである。
隣の部屋からは「さん、さん、産直〜、パルシステム♪」と最近娘が気に入っているCMが何回も鳴っている。ユーチューブめ、無限再生していやがる。
ふわふわで、やわらかくて、食い意地張ってたけど、娘に嫌なことをされても怒ることなくじっと我慢するような、他のオス猫2匹どもにも平等に優しくする、そんな猫だった。
今ごろ、先に旅立った兄猫のタメゴローと再会して話しているかもしれない。「あいつの娘を相手するの大変だったわよ」